冬山合宿 涸沢岳西尾根〜奥穂高岳

日時: 2010年12月31日〜2011年1月3日
メンバー: 吉田、岩田、佐土原、谷岡

12月31日 天候: 曇-小雪
出発から雪の降りしきる中かと思いきや、以外と天候は悪くない。途中忘れ物を取りに帰って大休止。きれいな朝焼けも見られたり、穂高平避難小屋手前までは、青空になり、たびたび陽が射すほどで、もしかして天気良くなるの??と思うほど。
しかしこれは擬似好天で、数日前から槍方面に行っていた山スキーや登山の、「天気悪くなるから…」と引き返してくる数パーティとすれ違う。
広い白出沢を渡り、すぐに涸沢岳西尾根に取り付く。下部では薄い雪に土が見える部分もあるほどで、すねあたりまでのトレースがしっかり付いた柔らかい雪。
佐土原さんはしばらくしてアイゼンをつける。途中途中やはり木漏れ日が射し、陽が照らなくても、汗ばむほど暑い。前後していくつかのパーティが登っていた。
毎時15分の定時交信で関東パーティと連絡をとる。昨日同じ行程で、2400mのテン場に達せず今日は沈しているという。岩田さんが横にテントを張れるか聞くと、狭い場所なので無理との事。3度目くらいの交信では、お互いに同じ内容の情報で、いよいよ話すことが無くなり、まったりした交信に思わず微笑。
後続パーティに抜かれたり、時には追いついたりしながら関東さんのテントに到着。
この頃にはだいぶ小雪が舞って来て、テントから頭を出して迎えてくれた加藤さんの上に、話すうち、どんどん雪が積もってゆく。ここで小休止し、関東の方にあったかいお茶をいただいて、最後のがんばり。
もー無理、ちょっとでもスペースがあったら張りましょうといいながらも、なかなか見つけられず、結果オーライで予定のテン場まで到達! 同時に着いたほかのパーティがまだ上まで足を伸ばす中、ちょうどいいテント跡を早速見つけ、テントを張る準備に取り掛かる。
隣りでは別のパーティも準備に取り掛かっている。テントに入る頃には、まあまあの降雪で、ちょっとした間に雪が頭や背中に積もってしまう。
でも、その晩は樹林帯の中だからか、風もまったく無く思ったほどは天候も荒れなかった。
ここで、なんと谷岡がマットを忘れるという大失態。岩田さんが予備の銀マットを持っておられ、ありがたくもエアーマットをお借りできました。
[タイム] 新穂高温泉(-2℃)6:50〜9:50-白出小屋(-1℃)10:10-涸沢岳西尾根取付15:20-BC(2380m、-10℃)

1月1日 天候: 曇-小雪
前の晩、関東の方とも念入りに打ち交わせをしていたのに、大寝坊(目覚まし時計が鳴らなかった? 聞こえなかった)目覚めたときは、既に予定より1時間半経過していた!あわてて起き出し、外の様子を見ると予想(前日ラジオが日本語の放送をキャッチせず佐土原さんのハイパー携帯の天気予報で情報を何とか得ていた)よりはいいようだ。
私たちより起床時間も遅く、下から追いますと言っていた関東パーティが私たちのテントを通過していったのは、ご飯を食べ終わりあわてて準備をしているところ。昨日の晩の残り出汁で作った薄味雑炊に、差し入れの佃煮が助かりました!
関東さんに、なんのおもてなしもできず、昨日の恩を返せませんがそれどころではありません。
テントは残して、アイゼンをつけ、いよいよ出発。最初はいきなりの急登。尾根に出てしばらく行くと、早々と降りてきた単独の人。話を聞くと、F沢のコルまで行って、引き返してきたとの事。その先はトレースは無かったようだ。このまま下山し、今日中に帰るとの事。今日もいくつかのパーティが登っていて、これからの行く手が見越せる場所では、前を行くパーティが見える。後ろにも。いくつかの赤布と竹ざおが目印に立っているが、吉田さんが4本の竹ざおを、帰りに迷いやすいポイントに刺しながら、進む。


涸沢岳西尾根を登る

蒲田富士頂上はわりと広く、奥にもうひとつピークに見えるところがある。そこを超えF沢のコルまで下降。稜線のすぐ右に白くまっすぐルンゼが登っている。途中に3人小さい人らしきものが見えたが、追いつくと関東の3人だった。
登りでは、何度か検討するも結局ロープは出さずに、後は小さな登りやトラバースなどを繰り返し涸沢岳頂上到着。あと少し!一気に白出乗越へ下ると、一番手前に穂高岳山荘の冬季小屋の入り口があった。 総勢7人はもちろん奥穂の登頂は明日の楽しみにとっておいて、さっそく靴を脱いで小屋に上がりこみました。小屋は、広い別室のようなたたきがあり、もうひとつ引き戸を開けると、奥半分が広いカイコ棚で2階に仕切られていて、手前半分はそのままの空間。その床のまた右半分に、無人のテントがひと張り。後ろにもパーティが見え隠れしていたので、私たちはカイコ棚の下の半分強を占拠する。


冬季小屋

佐土原さん、吉田さんと関東さんがたっぷり袋3つ分取って来てくれた雪で、早速お湯を沸かし、差し入れの、懐中しるこを関東の方と一緒にいただく。しばしの幸せ。その後は、関東の方のリュックから出てきたウィスキーのハーフボトルを、薦められるまま遠慮も無しにいただく。これが一見ガラスに見えたのだが、なんとペットボトルだった。
しばらくすると。奥穂に登っていたテントの主(S山岳会4名)が戻ってこられた。ハーネス、スノーバーなども装備してられて、岩田さんの知り合いの方もいらっしゃり、話を聞くとロープも使ったとの事。そんなこんなしつつ、時間がたっぷりあるので、おつまみを出し合いながら酒盛り、しつつなんとなく晩ご飯に向かう前に、せっかくだから、みんなで天気図を書こうという話になる。
関東の方が、登山用のラジオもお借りして、2台鳴らして、4人で耳をそばだてる。「しっ、黙って」という声に、帰ってきてお湯を沸かしたりしていたS山岳会の方々も含め、小屋に緊張した空気がしばし流れる。なんとか書きあげ、岩田さんと吉田さんの天気図から、明日の天気も良好と判断し、安心して酒盛り&ご飯にもどり、早々に雑魚寝する。その前に、目覚ましを今度は何人かの携帯でかけ、早々と寝る様子の私たちに、「いつ頃寝られますか、私たちまだ起きてるのでうるさいかも」と恐縮するS山岳会の方々。
[タイム] 7:30-BC発9:45-蒲田富士(2742m)10:05-F沢のコル(-9℃)12:50-涸沢岳(3103m)13:20-穂高岳山荘冬季小屋(2983m)

1月2日 天候: 晴
テントが無いので寒いかな、と心配だったが、目が覚めるほどのことは無く、無事目覚ましで起床。夜には何度もトイレを往復する足音がした。冬に山で泊って、お尻を風にさらさずにトイレできる幸せを十分に味わう。朝ごはんを食べ、意気揚々と表に出てアイゼンも着けようかと。見ると空に星が。今日は幸先がいいぞ! しかし。 そう、あまりの暗さに、しばし入り口付近でたむろするも、再度小屋内にもどって明るくなるのを待つ。そうこうしているうちに、S山岳会の方達も出発の準備をすませ、玄関前がわらわら。
いよいよ明るくなり始め、見送りの佐土原さんが見守る中、岩交じりの急斜面を、アイゼンを利かせて登っていく。右手に、ひときわ大きくジャンダルムがモルゲンロートに照らされて赤く燃えてきた。振り返ると、涸沢岳に登り返しているS山岳会の4名が、どんどん遠くに小さくなっていく。


北穂高岳と涸沢岳

ロープを出そうかと考えるトラバースや急な稜線などもあったが、頂上までは雪もよく締まっていて不要だった。振り返ると、時々ガスに覆われるものの、槍の姿もはっきり見える。順調に進み、頂上到着。交代で撮影するも、寒さで何秒かしか、カメラの電源が入らない。加藤さんがふところにしまったカメラを取り出し、何度もシャッターを押してくださったが、すぐ電源が落ちて、いつも間に合わない! 実は、後から見ると、ちゃんと撮れていて同じポーズで何枚も写っていた。加藤さんありがとうございました。


山頂にて

周りの景色を堪能し、早々に下山開始。一箇所、急な斜面のトラバースで、吉田さんがロープを引いてフィックスを張って、通過する。後は、登りでたどった稜線やトラバースした場所を、下りでは少し違う、よりたどりやすいルートを選択しつつ、私は怖いところでは迷わずバックステップで下り、小屋に戻る。また小屋が見えだす距離から、佐土原さんが前に出ていて、出迎えてくれた。


穂高岳山荘前にて

パッキングをしなおして、目算では白出沢出合いまで、降りられるところまで行こうと言うことで下山開始。途中、一番後ろを歩いていた私からは、スリップしたらしい佐土原さんを後ろの岩田さんが背中から押さえ込んで止めている所しか見えなかったけど、その後は、念のために岩田さんが佐土原さんをロープで確保して降りた。


北穂高岳と滝谷

関東の方々は、加藤さんが一番若いという大先輩ですが、荷を軽くした後は奥穂での登りも早かったですが、下りはどんどん行かれて、しばし待っていただく場面もあった。私たちのテント場で関東の方に挨拶とお礼をして別れる。さっそくパッキングをしなおして、即出発、このあたりでもしかしたら、今日中に下山できるかも...と。
もう一泊して帰る、関東のテント前で、もう一度お別れを述べ、あとはひたすら下る下る... またもや汗が噴き出してくる中、出合い到着。
ここでアイゼンを外し、林道に入ったとたん、佐土原さんのスイッチが入ったようで、最初吉田さん先頭で、行進していたが、小休止のあと先頭に出ると、小走りに、一気に後続をはなしていく。岩田さんの「おーい、まてー」の声でかろうじて視界にとどめ、最後はヘッデンを出してほんの数分で新穂高温泉の駐車場に到着。ここからは街灯もあるので、ぎりぎりヘッデン無しでも降りてこられたかな。 下りでも、たくさんの登山者が登ってこられ、中には女性の単独の方も居られ、
今回は、コンディションや視界がずっと良かったので、強く不安を感じる部分は少なく人気のコースだと感じました。
[タイム]
6:40-冬季小屋発(-10℃)7:40〜8:00-奥穂高岳(3190m, -16℃)8:45〜9:30-冬季小屋12:00-F沢のコル13:20〜14:15-BC16:00-白出小屋17:20-新穂高温泉

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