5:00阿曽原温泉~6:00仙人谷ダム~6:20東谷吊橋~8:00十字峡~9:30白竜峡~10:00黒部別山沢~12:00内蔵助出合12:30~13:50黒部ダム
ヘッドランプを点けて阿曽原を出発するが,仙人ダムに着くころには明るくなってくる.空には少し雲があるが,今日も天気は良さそうだ.東谷吊橋からいよいよ旧日電歩道となり,一気に高度感が増してくる.番線がしっかりついているが,昨日よりもさらに黒部の水面が低く感じられ,足元も狭くなっている.周りの景色を見るとき,写真を撮るときは止まってというルールを守り,峡谷の景色を楽しむとあっという間にS字峡に到着した.何度も写真では見てきたが,黒部の青白い流れと流れを囲む岩壁,岩を彩る紅葉は,澄んだ空気と黒部の流れの音と相まってまさに絶景.十字峡への道も昨日に増して怖かったが,ずっと続く紅葉の絶景にまったく飽きる事が無かった.十字峡広場では小腹を満たしつつ,荷物を下して十字峡を見に川岸に降りてみる.十字峡は剱からの剱沢と爺ヶ岳からの棒小屋沢が同じ場所で黒部に交わる場所.長く広い黒部の流れの中で,十字峡の流れに自然の不思議を感じた.十字峡から上部はより足場が不安定になる.幾つものハシゴや斜面に組まれた足場を通過するごとに,毎年この道を整備する人の大変さが身に染みてくると同時に,阿曽原で聞いたこのルートを逆コースだが4泊5日で歩ききった人の話を思い出す.その人は外国の方で,なんと道幅の1.5倍の巨漢だったそうだ.ふつうの人が歩いてもスレスレの道をどう歩いていたのかと想像するとなんだか可笑しくなってくる.高度を少しずつ下げ,黒部の流れに近づいてくると白竜峡となる.渦巻く黒部の流れがはっきりと見え,とにかく流れの音がすごい,迫ってくる大迫力の音と川幅が10mもない峡谷を流れる水の迫力に,押されるような黒部の自然の力を感じた.上流の黒部ダムから放水をしており,水量が多かったようだが,大迫力の音はずっと耳に残っていた.白竜峡から先も標高が1000m程度である事から紅葉を楽しむ事ができ,大タテガビン沢付近の紅葉,新越沢・鳴沢小沢・鳴沢など時々現れる対岸の小滝に飽きることなくあっという間に内蔵助谷出合に到着した.内蔵助出合まで7時間程,黒部ダムまでは2時間かからないため大休止をする.十字峡からゆっくり休めるところはほとんどなかったため,ゆっくりと昼食,丸山東壁を眺めながら昔のクライミングの話を聴いたり,内蔵助谷の先にある内蔵助平やハシゴ谷乗越に行きたいと来シーズンの計画を立てたり,休憩中も楽しかった.内蔵助出合を出発すると黒部の河床も少しずつ広くなり,終点の黒部ダムに近づいてくる.早く黒部ダムを下から眺めてみたいのはあるが,ダムが見えたらこの下の廊下の旅も終わりに近づいていると思うとなんだか寂しくなってくる.いよいよダムが見えるところに着くと,観光放水のシーズンは終わっていたが,放水中で,対岸に渡る橋もすぐ下に流れがあり,ダムからの風で涼しかった.ダムまでの急登を一気に上がるといよいよ黒部ダムサイト,14時前に無事到着したことにほっとして,2日間歩ききった満足感と疲労感でいっぱいだった.黒部ダムからのケーブルカー,ロープウェー,トローリーバスは初めてでウキウキしていたが,さすがにダムから立山駅は長くて最後の室堂からの高原バスは寝てしまった.充実の2日間で,また訪れてみたい黒部下の廊下だった.