2016年8月11日~15日
メンバー: 吉田、ブルーレー、井元
【行程】
11日 剱沢キャンプ場泊
12日 剱本峰経由、三ノ窓泊
事前情報、或は室堂に入ってからも、剱沢コースの状態が非常に悪く通行困難との
アナウンスがあり、本峰経由で三ノ窓に入ることになった
13日 チンネ登攀、三ノ窓泊
14日 剱本峰経由、雷鳥沢泊
15日 下山
8月11日 晴れ
11:40 室堂発
14:30 剱沢キャンプ場
室堂、雷鳥沢キャンプ場は大勢の登山客で賑わっていたが剱沢キャンプ場はそうでもない
ここで明日のビバーク地の三ノ窓で水が取れるかが議論の的に
例年に比べて、雪渓が少ないとの情報を受け、山岳警備隊の方などと話し情報収集するが結局分からず…
明日は各自水筒類を満タンで担ぎ上げ、もし現地水がなければ予定変更してチンネ登攀後即撤退するという結論に
明日からの行動に備え、早々に床につく
8月12日 晴れ
4:30 剱沢キャンプ場発
5:30 剣山荘
10:00 剱本峰
「カニのタテバイ」前は蟻の行列状態で、1時間半炎天下で順番待ちだった
10:30長次郎のコル~長次郎の頭
いよいよ北方稜線、本峰をあとにピークを2つほど越え一気に下降して、第一関門の長次郎のコルへ
この下降中、前方から登ってくる学生パーティが落石を起こし、長次郎のコル→長次郎雪渓へと
遥か下まで落ちいく壮大な落石に発展していた
長次郎雪渓にも沢山の登山者ら取り付いていて、大事故に繋がらなくて本当に良かった
長次郎の頭は右のバンドに赤い残置スリングがあり、直登せずの右から巻くことに
バンドを回り込むと、その奥にルンゼが現れる
これをさらに右に横切ると二本目の残置スリングがあり、そこを抜ける
長次郎の頭をパスしてからも、ワイルドなルートが行く手を阻む
不明瞭かつ複数枝分かれした踏み跡に惑わされてルートファインディングに神経を使い、終始ザレた斜面に体力も奪われていく
振り返ると、まだ本峰が近い…三ノ窓までいったいどれくらい時間がかかるのか、気が遠くなる
第二関門、モアイの岩の辺り?の岩棚のトラバース、ここを渡るのがまた怖い
途中危うい箇所に残置スリングあったが、まったく気が休まる暇がない
ようやく八ッ峰の頭が近づいてくると、右眼下には熊の岩、その下にテントが数張り確認できた
13:30 池ノ谷の頭、池ノ谷乗越、池ノ谷ガリー
池ノ谷の頭にでると、遂にチンネとその奥に小窓ノ王が顔を出した
しかしほっとしている場合ではない、これからが本日の核心池ノ谷ガリーである
緊張しつつ一歩踏み出すが、予想通りというか予想以上に不安定だ
大小さまざまな岩屑が堆積した最悪のガレ場で、小さな落石を起こせば連鎖でたちまち一帯が雪崩を起こす
我々は比較的安定した左岸を慎重に下降、なんとなく踏み跡もあるのだが…
一番嫌なのは、予定ではあと二回はここを通過しなければならいこと
途中、どこからか「ガンバ~!」と声が響く 見渡すと前方の小窓ノ王の先端付近で女性が手を振っている
しばし勇気づけられ前進
この女性とはこの後三ノ窓で再会する、初老の夫婦で池ノ谷を詰めて近辺を散策してたとのこと
14:40 三ノ窓
一同神経衰弱状態で三ノ窓に到着
先着のテントが2張り、中からいかにも優しそうなと中年男性と三十代くらいの男性が顔を出しご挨拶
群馬の山岳会の方で、明日の予定を訊くとチンネ登攀とのこと、というか今日~明後日下山までルートも含めて我々とまったく同じ行程だった
さらにありがたいことに水場の情報も教えてくれた
早速、井元と吉田で情報をもとに雪渓を渡る(手にはプラティパスとピッケル)が、教えられた場所の水はもう枯れていた…
結局雪渓の雪で水を作るしかないのかと諦めていると、吉田がシュルントに潜り込んで水が出ている場所を発見! 概ね10分で200mlくらいは出ている、翌日もこの水場を使うことに
他、後着の3パーティにこの水場を教えて大変感謝された
8月13日 晴れ
5:30 三の窓発~雪渓~取り付き
出だしの雪渓トラバースは想像以上に怖く、今回6本歯アイゼンで挑んだが前爪のあるアイゼンが欲しいと思った
我々が取り付き一番乗り、若者3人パーティ(昨夜水場を教えて感謝された)が直後に到着し先に行ってもらった
6:30 登攀開始
1P IV 凹角~バンド
リード: 井元
ホールドも豊富で快適に登る
2P IV リッジ(フェース)
リード: 井元
左稜線のリッジだが、のぺっとしていてフェースに近い
フリクションのよい岩質で引き続き快適、上部でルートを誤りランナウトしてちょっと怖かった
3P Ⅱ バンド~歩き
リード: ブルーレー
右上の岩を回り込む、ロープの流れを考えて短くピッチを切る
4P IV チムニー~フェース(正規は正面のフェースか?)
リード: ブルーレー
快適なチムニーが楽しいピッチ
5P Ⅰ 草付水平リッジ
リード: 吉田
6P III フェース
リード: 吉田
下でロープの残りをコールするが、リードの吉田に声が通らず…
ロープいっぱいで何とか終了点、結果的に2ピッチつないだことになる?
7P III ピナクル帯~T5
リード: 吉田
一気に高度感が増してくる、すばらしい景色を楽しみながらのクライミング
左にはクレオパトラニードル、頭上に立派な鼻が見えてきた
T5 大休止
若者2パーティに先に行ってもらう
8P V 鼻
リード: 吉田
ついに核心のピッチ、ずっと我々の後ろについていた群馬の山岳会のお二人も見守る中、垂直のカンテからスタート、最初のハングを右から乗越し、続けて小ハングを乗越す際には爆笑を誘う吉田
後で聞いた話では、小ハングまでの核心部でランナーとりすぎて最後ギアが足りずヒヤヒヤしたとのこと
9P IV 凹角~リッジ
リード: ブルーレー
高度感が最高潮のクライミング、このピッチが一番良かった
10P III リッジ、フェース
リード: 井元
フェースからすぐにピナクル帯に入りロープの流れが悪く短く切る
ロープの裁きが思うようにならなくてナーバスになる
11P III ピナクル帯
リード: 井元
引き続き、ロープの裁きが思うようにならなくて更にナーバスになる
個人的な課題として、今後3人パーティでのシステムの理解度を深めていきたい
12P III 水平リッジ(最終ピッチ)
リード: ブルーレー
チンネの頭でお約束の写真を撮ってもらう、チンネを制覇したというのに後半に縺れたロープのせいで気分はいまいちだった
15:30 登攀終了、懸垂~池の谷ガリー
少し休んでから懸垂で下山にかかる
2ピッチの懸垂で最終的に池の谷ガリーに降りるのだが
まずは、チンネの頭-池の谷の頭のコル(稜線から左90度方向)めがけて1ピッチ目の懸垂下降
先頭の吉田が降りながら「岩が脆いので落石起こさぬよう!」と声が飛ぶ
2人目のブルーレーが恐る恐る降りる、井元は懸垂地点横にある下降路が安定していて速やかにかつ安全に降りられそうなので、この下降路を降りることを選択したが懸垂のロープを引き抜く吉田の指示で、ロープが無事に抜けるまで支点に留ることになった
無事にロープが抜けて、コルの方向に落ちていくのが見送ったが、最後のところで岩の隙間にロープの末端が引っかかっているように見えた…次の瞬間、
強い力で引かれたロープの末端が、電子レンジほどの大きさの岩を掘り起こして滑りはじめたのだ
らーく! らーーくっ!! の叫び声と同時に岩が落ちていく…もの凄い音!
懸垂支点付近からは、コルに居るはずの吉田らの姿はまったく見えず、最悪の想像が頭をよぎる
すぐに「大丈夫~?」と声を掛けるが、返答がない…時間が凄く長く感じた
暫くして「大丈夫~!」と下から声が やっと息ができた
無事で何よりだったが、吉田の真新しいロープが落石の直撃を受けて切れてしまった
2ピッチ目の懸垂をより慎重にこなし、池の谷ガリーに降り立つ
結局、テン場に戻ったのは17時半
精神的にヘロヘロだが休んでいる暇は無く、直に水の調達へ向かい暗くなる中、ささやかな晩餐
三ノ窓からは遥か遠くに富山市内の夜景が見渡せる
富山湾の海岸線付近に小さな小さな打ち上げ花火が見えていた、下界は花火大会だった
8月14日 晴れ後小雨
6:00 三ノ窓発~池ノ谷ガリーIII
この日も快晴の中、少し疲れはあるが気持ちよくスタート
が、まず池の谷ガリーで一定のテンションが強制的に下げられる
しかし、流石に3度目となると耐性ができてきて、慣れてる自分がいる
6:40 池の谷乗越
しつこい池ノ谷ガリーに別れを告げ、先を急ぎたいところ
往路で通過しているはずなのに北方稜線はやはり時間が掛かってしまう
8:30 岩棚のトラバース(モアイ岩付近)
岩棚のトラバース、往路より上段に位置するチムニー状のルートを選択したが、どちらも難所であることに違いはない
一息ついて小休止していると、頭上でガラガラっと音がする、落石!と思ったら、そこには単独行のおじ様が立っていた、S山岳会のOさん、昨日室堂から入り長次郎谷右俣から北方稜線を歩いて今日中に早月尾根から下山予定とのこと
これも何かの縁と、本峰までの間Oさんと行動を供にすることに
9:30 長次郎の頭~長次郎のコル
往路と同じルートを模索するも、逆からは難しいと判断、往路では横切ったルンゼを上から懸垂で降りることに
大きな岩塊に捨て縄で支点を作る(捨て縄はOさんが提供してくださる)
11:00 本峰
集合写真と大休止、Oさんと再開を祈ってお別れ
この時は、何とか今日中に下山できそうな気がしていたが、気のせいだった
三日間の疲れが出てペースが上がらず、雷鳥沢で
ケーブルの最終が微妙に…
諦めてもう一泊
8月15日 小雨
始発で下山~帰阪
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