日程: 2016年9月10日~11日
行程: 滝谷出合~スノーコル~第四尾根登攀~稜線~穂高岳山荘~白出沢~新穂高温泉
メンバー: 望月、徳本
穂高の稜線から急峻に切れ落ちる、まさに「鳥も通わぬ」滝谷。その出合から谷筋を詰め、そのまま第四尾根を登攀して稜線まで駆け上がる、シンプルで美しいルートだ。とはいえ標高差は約1200m、出合から見上げる稜線あたりの岩峰群は果てしなく遠く、足元はガレガレの不安定な岩屑、又は崩れたスノーブロックか。いきなり大滝は越えねばならないし、ヤバい雪渓も多分あるだろう。ルートの状況をいろいろ想像するものの、結局は行ってみなければ分からない。暗闇の中、アプローチ道を懸命に歩く。
9/10(土) 快晴
2:00 起床
2:40 鍋平駐車場出発
3:00 新穂高ロープウェイ
4:20 白出沢出合
5:15 滝谷出合着
夜明けの滝谷出合
5:40 滝谷出合発、ガレた河原歩き・崩れそうな側壁トラバース
6:30 雄滝登攀開始
雄滝、雌滝の二股 雄滝 右岸尾根より巻く
1P目(望月⇒徳本)雄滝と雌滝を分ける尾根末端の岩稜(30M)
浮石だらけで見た目よりかなり悪い。時間が掛かってしまいリード交代して突破(落石避けるためビレイヤーとロープは壁から離れるべき)
雄滝右岸尾根の取付き かなり悪い
2P目(望月)バンドトラバースから草付を右上(60M)
3P目(徳本)草付を右上し小滝手前まで(30M)
4P目(望月)小滝からトラバースし雄滝落ち口手前(60M)
雄滝落ち口にて 計4ピッチで巻き上がる 雄滝落ち口から見下ろす
9:00 上記から3Mほどクライムダウンし、雄滝を突破
9:30 滑滝手前の10M滝は左岸側から巻き上がる(ロープ無しは結構怖かった)
9:45 滑滝登攀開始
ナメリ滝 3ピッチの登攀 とにかくガレガレ
1P目(望月)1段目左岸側フェースを一段越え、スラブ直登(50m)
2P目(望月)同左岸側上部スラブから2段目の釜の右岸まで(40m)
3P目(徳本)2段目右岸側フェースより落ち口へ(25m)
ナメリ滝3ピッチ目 徳さんリード
12:00 滑滝を突破、装備を整理、小休止
12:15 遡行再開、ガレ場と小滝が続く。雪渓が多少あったが横を巻いて登れる。ロケーションは滝谷のど真ん中。A沢、F沢の出合でほぼ水は涸れるため、各2L確保する。天候、視界とも良くA沢~F沢、その奥に絶壁が屹立する様は圧巻。しかしここまで来るともう後戻りはできない。
滝谷各沢の合流点にて
12:30 第四尾根末端の左側(B沢)に入り、すぐに出てくる二俣を右(C沢)へ。ガレ沢をひたすら詰め、ロープ不要な涸れ滝を多数登る。高度を上げるにつれ若干ガレがましになってくる気がする。
C沢下部 小滝が連続
まさしく岩の墓場 スノーコルへの踏み跡
13:45 C沢右俣・左俣の分岐から水平バンド(踏跡あり)をつめて第四尾根スノーコル到着。予定よりも早い到着で、かつ翌日天候悪化が予想されたため、できる限り先に進み、あわよくば本日中の完登を目論み、四尾根に取り付くことにする。最初はワンポイント二級程度の岩を越えて水平リッジを100mほど進むと1ピッチ目のフェースに突き当たる。両側が切れ落ちて物凄い高度感があり、まさに滝谷の核心部という雰囲気。
1P目(III、40m)望月
2P目(III、40m)徳本
ここまでは段々のフェース。難しくはないが浮石に注意要。ガバは多いが岩角が全体的に鋭利で注意がいる。
2ピッチ目の登り
3P目(Aカンテ、III、30m)望月
4P目(Bカンテ~水平、III+、50m)徳本
Aカンテ~Bカンテは素晴らしい高度感だが周りがガスっていて残念。カム、ハーケンで支点を作りやすい。岩のフリクションが乏しく、もし濡れていたら即滑りそう。
5P目(Cカンテ、III+、30m)望月
6P目(凹角、III、40m)徳本
7P目(フェース~クラック、IV)望月
Cカンテは遠目に見ると弱点が見当たらないが案外ホールド豊富で支点も取りやすい。この辺から傾斜は段々強くなってくる。その後2ピッチでツルムの頭に到着した。
ルートはここで懸垂30mからの残り2ピッチだが、時すでに18時前であり、日が暮れる前に抜けられないリスクありと判断。幸いツェルト1つ程度張れるだけの平地もあり。
2人とも非常に空腹、寝不足なのでで速やかに晩飯を済ませて就寝した。風も無く良い天気で、夜中は放射冷却のせいか寒かったが結構快適なビバークだった。
9/11(日) 晴れのち曇り
5:30 ツルムの頭から懸垂1ピッチ。降りた地点が8ピッチ目の取り付き。
8ピッチ目(クラック IV) 望月
8ピッチ目の終了点チムニー上
9ピッチ目(岩稜~ハング越え V) 徳本
そこから望月がリード交代し20m程度の簡単なリッジ歩きで4尾根は穂高主稜線と合流した。7:15到着。そこで荷物もまとめて10分弱の歩きで北穂~涸沢岳の間の稜線の登山道に飛び出す。
ラストピッチ 北穂の稜線はもうすぐ
最後の2ピッチは、前日見たときはそうとう傾斜が強く、手強そうに見えていたが、8ピッチ目は取り付いてみるとホールドスタンスは豊富でプロテクションと取りやすく快適この上なかった。むしろ重荷を背負うフォローはザックの背が高くなりすぎヘルメットに干渉するため、上を向けず非常に苦しかったとのこと。次のピッチでフォローを代わり、その意味が良くわかった…。9ピッチ目もグレードはルート中最難であったが、さすが徳本さん、スムーズに登って行かれた。
第四尾根全景 槍ヶ岳への稜線
登攀中に天候悪化もアクシデントもなく、なかなかハードではあったが出合から稜線までの長い旅を楽しむことができた。
ここまでくればもう安心 滝谷を見下ろす 出合は遙か彼方
前穂北尾根 奥穂高方面
1時間少しの稜線歩きで涸沢岳を越えて穂高岳山荘に到着。ここで大休止して2人とも何故かカップ麺と飲み物を購入。穂高岳山荘はやはり人が多かったが時間が早いからかクライマーには会わずじまいだった。
9:30 白出沢ルートから下山開始。
白出沢途中から見上げる
登山道を一気に降り、2時間ちょっとで白出沢の出合(新穂高-槍平間の林道)に出る。
12:30 新穂高登山センター着。ここから鍋平の駐車場まで泣きのひと登りで13時過ぎに山行終了となった。
今回はやはりとてもハードだったが、パートナー、コンディションに恵まれて大変良いクライミングができたと思う。滝谷は確かにハードだが、出合から稜線までの沢と岩がミックスした登攀は、一度はトライする価値ありと思った。(しかし次行くならば、今度は残雪期に快適にアプローチしたいのだが...)
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