2006年5月 春山合宿 ジャパン・オートルート
2006年5月3日〜7日
メンバー: 村上・柳瀬・田口(OB)・岩田

いつかは行ってみたい、いつかは行かねばならないと思っていたジャパン・オートルート。立山から薬師岳を越え、黒部五郎岳から双六岳、そして最後に槍ヶ岳の頂を踏む、立山連峰の脊梁を走破する長大なルートである。
メンバーは蛍雪一の体力の持ち主、村上。山が面白くてしかたがないナース柳瀬。強靭な肉体美と体力・技術を誇る62歳の田口さん。50歳を過ぎてどうにか復活した岩田の4人。このメンバーなら大丈夫と自信を持つ。後の不安は天候だけである。
今回はスピードと快適性を重視するため、全て小屋泊まりにした。
2〜4日目は平均11時間行動になるので、スピードが遅いとビバークになってしまう。
装備は各自10kg、柳瀬と岩田はスキー板を99センチのフリーベンチャーにしたが、一長一短があった。利点は担いだときの軽さとシールの脱着時の簡易さ。欠点は緩傾斜面の滑りが悪いことである。プラス・マイナス、ゼロというところか・・・。
5月2日の夜、満員の新潟行きの夜行「きたぐに」にて大阪を出発する。

5月3日 快晴
登山者・スキーヤー・観光客で満員のケーブル・バスを乗り継いで室堂へ上がる。情報通り積雪量は多い。この雪の多さが凶と出るか吉と出るか・・・。 快晴の中、まずは一の越へ向かう。

室堂にて参加メンバー
五色が原を望む

一の越からは一旦、御山谷を2,500m付近まで滑り、龍王岳の東面を廻りこみ鬼岳とのコルまでシール登行する。鬼岳を東面から巻き、難しいシール登行で獅子岳を越え、ザラ峠まで快適な急斜面(標高差約200m)を東寄りから滑り込む。(クラストしていたら恐ろしい!) 峠で佐々成政の厳冬期の峠越えの話をしながら進むと、前方に広大な五色が原が見えて来た。閉鎖している五色ヶ原山荘の横を通って、五色ヶ原ヒュッテに到着する。

獅子岳の滑降
ザラ峠

ヒュッテは正式に営業しておらず、素泊りだけなので食料・コンロは必携である。元気が有り余っている田口さんは、ヒュッテ裏の鷲岳を一人で滑りに行く。
小屋で10年前にこのルートに行った秋田・中尾の女性コンビと偶々一緒になった、愛知のT山岳会の方とお会いする。偶然とはいえ、よく一緒になったものである。世間は狭い! 小屋の宿泊者は約17〜18名、全員オート・ルート組である。

[コースタイム]
室堂(9:15) 一の越(10:15〜10:45) 獅子岳(12:55) ザラ峠(13:30〜13:40) 五色ヶ原山荘(14:20)

五色ヶ原山荘
夜明け

5月4日 快晴
朝は3時起床。各自持参の朝食を摂り4:30に出発する。
夜明け前のクラストした鳶山の斜面をシール登行する時にご来光を迎える。今日も天気だ! 越中沢岳へは、やせ尾根から広い斜面をシール登行、下りはスキーを担ぎ一部は後ろ向きになって降りる。 さあこのコルから薬師岳まで標高差約800mの登りだ。気合いを入れて出発する。

2356m峰から薬師方面を望む
赤牛岳方面

越中沢岳の下降
雪に埋まるスゴ乗越小屋

屋根まで雪に埋まったスゴ乗越小屋を越え、本日の行程の中間地点である間山に着く。しかし薬師はまだまだ遠い。北薬師岳を越えると左下に薬師の圏谷が見える。ここを滑ったら気持ちが良いだろうなと考えながら、最後の登りをヒイヒイ言いながらやっと薬師岳に着く。

薬師岳よりルートを振り返る
雲ノ平と槍ヶ岳

振り返ると遥か先に昨日出発した立山方面が見える。よくあんな遠い所からここまで、よく来たもんだと感慨にふける。
頂上でゆっくり休んで今日初めてで、そして最後である滑降に入る。薬師峠まで標高差600mの滑りだ、広い快適な斜面を皆、思い思いのシュプールを描きながら滑る。
峠から太郎平小屋まではわずかの登りだが、疲れと達成感でふらふらになりながら小屋に到着すると、ちょうど15時30分。所要タイムは11時間予定通りであった。

[コースタイム]
五色ヶ原山荘(4:30) 越中沢岳(6:40〜7:15) スゴ乗越小屋(9:55〜10:15) 間山(11:15〜11:35) 北薬師岳(13:00〜13:30) 薬師岳(14:00〜14:45) 薬師峠(15:10) 太郎平小屋(15:30)

太郎平小屋
黒部五郎のカール

5月5日 快晴
朝は4時起床。太郎小屋でおいしい朝食を摂り6:30に出発する。太郎山の山頂の左を巻き、北ノ俣岳を目指す。今日も3日連続の快晴で何の不安も感じない。北ノ俣岳の山頂に無事、岩田、村上、柳瀬の3人が着き、少し遅れて出発自体が遅れた田口さんも着く。この4人は歩くペースはばらばらだが、意外と息が合っているのか、大きな歩行差にはならないようだ。
山頂よりシールをはずし、赤木岳の東面をトラバースし、中俣乗越を目指す。日本で最も快適な斜滑降と本には書かれていたが、ショートスキーの岩田さん、柳瀬さんとぐんぐん差が出る。田口さん、村上で飛ばし所々待つ。中俣乗越で休憩し再びシールを着け黒部五郎岳を目指すが、山頂直下は傾斜がきつそうなので、スキーを担ぐかどうするか、ちょっと迷ったが田口さんの「行ける!」との言葉で最後までシールで登る。
黒部五郎岳に10時過ぎに全員到着。予想どおりの大展望である。北アルプスの主な峰々が全て見える。来てよかったと実感する。写真を撮ったあと、カールを滑るか稜線を滑るか議論となったが、カールからのトラバースがきつそうなのとカール終了から少し登りになる事も推定され稜線を下る事とする。下り2時間を30分で下る。スキーの機動力を実感する。

黒部五郎小舎
双六小屋

黒部五郎小舎は谷間にぽつんと立っているかわいい小屋で、また今度泊まりたいと感じさせる小屋だ。小屋前で昼食をとる。村上は太郎小屋で買った中華ちまき。軽量化を徹底させ3日連続でオールレーズンとしていたので大変おいしく感じた。小屋より三俣蓮華の登りでは陽が強烈に差してきて汗をかきながら登る。三俣蓮華には13時30頃に着く。三俣蓮華より槍ヶ岳が大きく鋭く天を刺す姿が見え美しい。
一旦鞍部に下った後、本日最後の山である、双六岳だ。振り返ると今まで歩いてきた立山、薬師岳、黒部五郎、三俣蓮華等が見える。なんと長い距離を歩いたことだろう。
双六岳到着。双六の下りは本日一番の楽しいスキー滑降だ。あまり右に下ってしまうと双六小屋へ双六谷の登り返しをしないといけないため、左へまきながら小屋へ滑る。昨年もこの斜面は滑ったが本当に素晴らしい斜面である。
双六小屋に着いた時間が16時だったため、受付横で天気図を描く。3日連続で天気図を描いてきたが、巨大な高気圧に日本列島が覆われていたため快晴が続いている事がよくわかる。しかし高気圧の中心が太平洋に出た事と中国大陸で低気圧が発生した事により、少し不安を感じる。明日は九州では崩れそうだが、北アルプスはなんとか持ちそうだと判断する。しかし西鎌尾根の6時間から7時間をひたすらスキーを担いで登るということに村上の気持ちが乗っていかない。それに反して3人は行く気満々である。てんぷら、豚汁のおいしい食事をとって、朝食を弁当とし寝ることとする。


[コースタイム]
起床(4:00)小屋(6:30)北ノ俣岳(8:05)中俣乗越(9:20)黒部五郎(10:15〜10:45)黒部五郎小舎(11:15〜11:50)三俣蓮華岳(13:40)双六岳(15:05)双六小屋(15:50)

5月6日 晴
夜通し、窓の外から風による物音が聞こえ、予報通り低気圧が近づいているのか不安な中、朝を迎える。小屋で用意していただいた立派なお弁当を摂る最中、岩田さんがGOサインを出す。いよいよ来たか、と言った緊張感、槍はおなかいっぱいの村上さんは苦笑い、田口さんは気合十分。それぞれ思いを抱いて、小屋の御主人に見送られて出発。T山岳会も天候が良いので予定を変更して槍を目指し、先に出発している。

西鎌尾根と槍ヶ岳
西鎌尾根を行く

槍までSKIを使える所は無く、始めから担ぐ。樅沢岳まで擬似ピークにだまされながらも、朝日の中、快適なウォーミングアップ。ここでアイゼンを装着、西鎌尾根へ。美しいナイフリッジ、適度な雪の硬さにアイゼンが効き、気持ちいい。この上も無い幸福感と、やっぱり遠くにしか見えない槍を前に足を進める。時間が遅いと雪が緩み、技術的にもペース的にも悪くなるだろう。硫黄乗越前後はアップダウンがあるものの、夏道状態で槍を目の前に楽しく歩く。コースタイム通りに千丈沢乗越を過ぎると、西鎌上部の雪の急斜面が肩に向かって上へと続いている。ストックをピッケルに代え、慎重に登る。足を外せば、飛騨沢に飲み込まれそうでひたすら上へと向かう。有り難いことにトレースを踏んでいたが、もう一息のところで誰かに!?『こんないい雪、トレーニングにもってこいや!』と、トラバースや直登を命じられ、泣く泣く従う。腰がいっぺんにやられてしまい、思わず不平を吐いてしまった。

槍ヶ岳を目指して
槍ヶ岳山頂にて

さすが肩には登山者もちらほら見られる。槍に飽きた村上さんは肩で休憩、3人で穂先へ。高気圧が粘り強かったのか、快晴、微風、360度の展望を満喫し、記念撮影。抜きつ抜かれつしていたT山岳会は、雪が緩む前にと先を急ぎ姿はもう無い。私達も飛騨乗越へ後を追う。上部30度程度の斜面はギリギリ許せる雪の状態。それぞれ選びながら思い思いのシュプールを描き、4日間の苦しみ!?を晴らすかのごとく滑りを味わう。じきに雪は重いシャーベットになる。所々デブリ跡が見られ、先の冬合宿で幕営したと言うあたりを確認。槍平小屋に着いた頃には、まさに春SKIと言った感じ、暑くてたまらない。とりあえず白出沢を目指す。ここから傾斜が緩み、田口・村上さんは速さと強さを発揮、あっという間に姿が消える。私は疲れと暑さで急に気持ちが悪くなってしまい、ショートスキーのためペースもあがらないからと岩田さんを待たせながら着いて行く。スノーブリッヂを冷や冷やしながらやり過ごしたところで、田口さんが道を模索している。村上さんも必死だったらしく行ってしまった様子。白出沢の出合いに近いはずだが小屋が見つからず、踏み跡も混在しており迷う。結局、小屋は見つからず、木道を発見し、なんとか林道に突き当たる。村上さんが待っており、同様の道をT山岳会と出合い、約50分前に辿り着いたとのことだった。今年は積雪が多かったと言うものの、ここからは一部しかSKIは使えず、長い林道をひたすら歩く。私は心身ともに疲れて、夢遊病者のようだった。
新穂に着き、公衆浴場は4時までで入れず、バスを待つ間、足湯で疲れを癒すことに。さて、夜行で帰るか、一泊するかと何とはなしに話していると、田口さんが朗報を運んでくる。交渉し6000円そこそこ出せば一泊二食もちろん温泉着きの宿を栃尾温泉に見つけたとの事、さすが!!迷うことなくいざ宿へ。『多代次』さんというこの宿は釣人の常宿らしいが、民宿らしからぬ旅館のようで、親切なご夫婦にお世話になり、ご馳走を用意していただき、素晴らしい祝杯を上げることができた。

[コースタイム]
起床(3:00) 双六小屋(4:40) 樅沢岳(5:30) 千丈沢乗越(8:30) 槍の肩(10:00) 槍ヶ岳(10:35) 槍の肩(11:00) 飛騨乗越滑降開始(11:40) 槍平小屋(12:25) 新穂高温泉(16:15)

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