モンテ・ローザ デュフールシュピッツェ
(Monte Rosa Dufourspitze 4634m)


岩田 修一・真利子

7月31日 晴
爽やかな天気の朝、ゴルナーグラート行き登山電車へ向かう。切符を購入後、何か違う感じがして二人で顔を見合わす。そこはクラインマッターホルンリフト乗り場。急いで切符を払い戻して小走りで登山電車に向かう。駅には大勢の人が切符売り場に並んでいる。大柄な男の人に抜かされないよう踏ん張り、電車出発2〜3分前に購入し電車に乗り込む。本に書かれていた通り、進行方向右側に席を取る。登れなかったマッターホルンが眩しい。下山したときは複雑な思いだったが、その美しい姿に惹かれてしまう。せっかくなので終点のゴルナーグラートまで乗り観光して、一駅下の出発地点ローテンボーデンまで歩いて降りることにする。ゴルナーグラート駅は朝早いが大賑わい、テラスでワインを優雅に決め込んでいる人もいる。3135mの展望台は360°の大パノラマ、山と氷河に囲まれスケールがすごい。マッターホルンをバックにセントバーナードとパチリ、写真を売っている。とても絵になり感心。スイスの国旗をモチーフにしたウエアで決めたMTBの男達、山をバックにパチリ、かっこいい。皆、様々に楽しんでいる。


モンテ・ローザ(左)とリスカム  MTBのカッコいい男達  モデルのセントバーナード犬

ローテンボーデン近くにある逆さマッターホルンで有名なリッフェルゼー(ゼー=湖)、波が少し立って湖面の半分を占めているがなんとかマッターホルンは写っているので写真を撮って遊ぶ。


逆さマッターホルン  マッターホルンをなでなで  マッターホルンにチュッ

モンテ・ローザヒュッテ(2795m)まではハイキングコースだが人は少ない。氷河沿いの道を歩いていくうちに対岸の岩場上にヒュッテが見えてくる。鉄の階段と長い梯子を使って氷河に降り立つ。ロープを結ぶパーティもいるが、私たちはアイゼンのみ付ける。所々底が見えず幅の広いクレバスがあり足がすくむ。目印に旗が立てられているが、気温で氷河の状態が変化するのか旗通りに進めない箇所もあり用心しながら進む。氷河を渡りガレ場に移る。踏み跡と目印を見落とし、いやらしい斜面を登ったりで無駄足を食って、やっとヒュッテに到着。遠くからは小さく地味に見えたが、建て替えられたばかりのヒュッテは多角形、太陽光発電からなる壁で輝いており、内装は木材、扉は重厚な鉄という独特なデザイン。


ゴルナー氷河上の道標  グレンツ氷河のクレパス  モンテ・ローザヒュッテ

横浜から来たという男性が2人ビール片手にくつろいでいる。毎夏ジュネーブで待ち合わせ、シャモニーに遊びに来られているという。今回はちょっとモンテ・ローザを登りに寄ったとのこと。・・・後日、この方達にはたいへんお世話になることとなった。
ツェルマット駅1620m(9:36) ゴルナーグラート駅3087m(10:15) ローテンボーデン駅2815m(11:00) リフェルゼー2927m(12:30) モンテ・ローザヒュッテ2795m(15:40)

8月1日 晴のち雨
今朝、モンテ・ローザを目指すのは宿泊者の半分くらい、約30人。ヘルンリヒュッテには及ばないが皆食べるのも準備も早く、静かに淡々としている。我先にということはないが、準備でき次第次々と出発して行く。私達は2、3番手、先行の明かりを追う。今日は標高差1800mの登り、ヒュッテからの大ガレ場は右を行くが左のルートもあり、上部の氷河手前で合流する。明るい月明かりの中、アイゼンを付け緩い斜面を登る。朝焼けが見え始めた4時半頃、小休止。無風、快晴、絶好のコンディション。


出発は2:30  大きな岩の間を登る  夜が明けてきた

Tシャツとカッパで寒くないが標高を上げると冷え込んできたのでウールの手袋と目出帽を付ける。冷えがなくなり快調に動ける。修一はスピードが上がらずしんどそうだったが、防寒の対処をすると少しずつ元気になる。気が付けば横浜の2人が追いついてきて声を掛け合う。ひたすら登りなので皆しんどそうである。稜線手前のザッテルの取り付きでは我々は、いつの間にか後方パーティになっていた。


夜明けの登行       マッターホルンに陽が当たる

稜線上の岩稜を眺め混み合いそうだなぁと思っていると、追い抜いたのか横浜の2人の姿無し(厚かましく追い抜かなきゃ、ダメだよ〜・・・と後で聞いた) 。稜線に上がると太陽が顔を見せ暖かい。雪の状態がよいので快適に雪稜と岩稜を進む。しかし初心者連れも多く、ガイドと違って簡単な箇所でもスタカットなうえに遅いので渋滞にはまり、約1時間の順番待ち。抜かさせてもらったり横から追い越したり、時間取り戻しにかかる。2箇所、約15mの壁は修一が豪快にリード。(修一はなぜか岩になると元気になる)


上部、岩雪稜帯


頂上が見えてきた   確保するヤナピー  頂上にて

待望の頂上、陽気なスペイン人パーティと写真を取り合う。


ノルトエント(4609m)  下降地点への下降  FIXロープのある下降

頂上の30m先から太いフィックスが延々約200m続いており下降準備に取りかかる。スピードを上げるため私はロアーダウン、修一はフリクションノットで確保して降りる。スペイン人のお兄さんにフィックスロープが振られて降りづらいので待ったがかかる。しまったと思い、前の人が降りきってからスタートし、待っている間にすぐスタートできるよう準備した。支点でお兄さんと一緒になるたびグッド、グッドと明るく話しかけられるので長い下降も気が紛れる。約8ピッチ、コルに降り立つが北面で体が冷え切ったので休憩せず、暖かいところまで降りることにする。暖かい雪原で大休止していてふと振り返ると、大セラックが上部に迫っており慌てて出発。氷河末端のクレバス帯になってから踏み跡が不明瞭になり迷う。眼下のガレ場に降り立った前のパーティに向かって叫ぶと、指で方向を示してくれるが、クレバス帯なので簡単に進めず、行ったり来たりした。


最後はクーロアールの下降  広い雪原を下る  クレバス帯で迷う

今夜はヒュッテには泊まらずアパートに戻るつもりだったので時間も気になり焦って修一に当たる。修一は膝の調子が良くないのでヒュッテに泊まる気持ちに傾いていたので、余計に息が合わない。なんとかガレ場に出るが、踏み跡に迷い、見えていたヒュッテも見えなくなってしまう。どうにもこうにもヒュッテが現れず途方にくれかけたところ、最後のパーティか、3人組が降りてきたので一緒に行動。ほどなくヒュッテが見え、命拾いする。マッターホルン同様、山のスケールが大きいのと、踏み跡があちこちにしっかりあるので、日本とルートファインディングの具合が違うような気がした。振り向きもせず必死で降りたら最終電車に間に合いそうだが、修一は降りてこない。結局やはり膝の心配があるのでヒュッテ泊まりを決める。横浜2人組、ツェルマットでの宿は予約してないので、私達のアパートに誘っていたがさすがに姿はなく申し訳ないことをした。携帯も持ってない2人だったが、シャモニーで再開が待っていた。夕方よりヒョウ混じりの雨が激しく降る。翌朝、食堂でスペイン人のお兄さんに再開。2人のクライミングはグッド、自分達の下山時間も大して変わらない、記念写真を撮ろう、と明るく楽しく時間を過ごせた。


スペイン人パーティと  グレンツ氷河1  グレンツ氷河2

起床(1:30) 朝食(2:00) 出発(2:30) 頂上(10:40) ヒュッテ(16:20)