冬山合宿 木曽駒ヶ岳

日時: 2012年12月29日〜2013年1月3日
メンバー: 吉田、野木、望月

冬合宿先発隊として12/29入山した。予定通り順調に行けば翌12/30には後発隊と宝剣山荘で合流後、空木岳まで縦走し1/2に駒ヶ根へ下山予定であったが、悪天候により丸二日は沈、進めた日も悪天の間隙をついて少しづつの前進がやっとという状況。さまざまなアクシデントや一歩間違えれば道迷い遭難というリスクもあったがどうにか切り抜け、当初予定とは大幅に違う行程となったが、結果的に大きな事故なく下山できた。また、連絡も取れない中で我々先発隊の下山を駒ヶ根で待機してくれていた後発隊へも深く感謝したい。

・予定ルート: 上松Aコース〜木曽駒ヶ岳〜宝剣岳〜檜尾岳〜空木岳〜池山尾根経由駒ヶ根下山
・結果ルート: 上記の通り木曽駒は越えたが宝剣山荘より乗越浄土を経て千畳敷へ下山

12月29日(土) 快晴
上松Aコース登山口の2.5q手前で路面の雪(気温高くシャーベット状)のせいで車が上がらなくなり、やむなく路肩へ停車し仮眠を取る。6時半起床。多少気温が下がった為か雪が締まり、時には後ろから車を押しながら少しづつ前進。登山口手前到着まで2時間以上かかる。その後駐車場の除雪を待ち、11時にようやく登山口へ。登山口は修験道の関係か、墓碑よりも一回り大きな石碑が数十建てられており異様な雰囲気。記念写真を撮り入山。30分程林道を歩き敬神山荘から登山道となる。気温が高く、汗をかきながら順調に5合目(金懸小屋)まで登る。
その後は多少雪も深くなったが、先行Pのトレースもあり、それほど苦労せず6合目付近の尾根上で幕営。

[コースタイム]
アルプス山荘P(10:10) 上松Aコース登山口(11:00、1070M) 三合目・12:00、+5℃) 5合目・金懸小屋(14:10、+7℃) 6合目付近幕営(15:30、2100M)

12月30日(日) 曇り後、暴風雪
7時過ぎに出発。雪が次第に深くなり、途中からワカンを出し膝位のラッセルとなる。8合目を過ぎ、樹林帯を抜けるころから風が強まり、稜線上に上がる頃にはかなりの吹雪、かつ視界が悪くルート確認に苦労する。木曽前岳通過の時間もかなり遅くなってしまい、天候も厳しい為
本日の予定であった木曽駒ヶ岳を越え宝剣山荘までの前進は不可能な状況となり、木曽駒ヶ岳手前の玉の窪避難小屋にてビバークへ方針転換。しかし、避難小屋手前で完全にホワイトアウトし(一度は道に迷い稜線南側の谷を下りかけた)、結局避難小屋手前の稜線上の斜面を掘り、強引にテントを張りビバークすることに。
強風の中どうにかテントに逃げ込んだが、この時に望月が持っていた外張りを不注意で飛ばされる。痛恨。また、斜面上に幕営したため十分な広さの平地が作れず、テント内に30センチほどの段差が出来たり、強風でテントがつぶれそうになるのを内側から体を張って耐えたり、吹雪の中で体も装備も何もかも雪まみれになったままテントに入った為、テント内にも山ほど雪がたまって全員ぐしょぬれ状態になってしまったりと、二日目にして非常につらい幕営だった。天気図をとったところ、寒冷前線が急激に発達しながら通過しており、翌日はさらに冬型が強まると予想。翌日こそ玉の窪避難小屋へたどり着き沈する方針となり、小屋に入れることを心底期待し寒さに震えながら眠れぬ夜を過ごす。ただし、この日の夕食(α米とペミカン八宝菜)の美味しさだけは、今も忘れられない。

[コースタイム]
起床(4:50) 出発(7:15、+2℃) 7合目(8:20) 9合目(12:30) 木曽前岳を越えたところで幕営(15:00, 2800M) (20:30)寝る

12月31日(月) 暴風雪・視界ナシ
朝起きると風は前日よりはまし、気持ち空も明るいが、テント内は霜。雪でバリバリであり、外は相変わらずホワイトアウトのまま。9時の気象通報を聞いた後、撤収し、たかだか数百mほどの玉の窪避難小屋へ移動。しかし、小屋の入り口が雪で完全に埋まっており、なんと中に入れない。やむなく小屋脇にテントを張ったが、まさか小屋が使えないとは。大晦日にして今年一の衝撃と言ったら言い過ぎかもしれないが、個人的にかなり凹む。
またこの日、無線や携帯等で後発隊・留守本部と何度か連絡を取ろうとしたが、結局無線はつながらず携帯も留守電がやっと。無線・携帯はこの後も一切稜線上では使用できなかった。
また、この日より野木さんの右手の指に凍傷が出来始めた。前日の前線通過後、相当気温が下がっており、そのためザック等のあらゆるベルトの長さ調節が凍って動かなくなり、さらにザック、ウエア、テントなどのジッパー類も氷が噛んで動きが悪くなる。これには非常に困った。

[コースタイム]
起床(6:00) 出発(11:00,-12℃) 玉ノ窪避難小屋着(11:15,2750M) 小屋横で幕営 (19:50)寝る

1月1日(火) 暴風雪・視界ナシ
年は明けたが相変わらず天気も視界も悪い状況が続く。硬くクラストした斜面を登り強風の木曽駒ヶ岳へ。避難小屋から一時間弱登り、今回4日目にして初めてのピークを踏み、50周年旗で記念撮影。ただしこれから宝剣、空木への縦走などとても出来るような天候・体調ではなく宝剣岳手前から千畳敷へのエスケープにより下山やむなしの状況であり、とりあえず先を急ぐ。しかし、この後の、中岳を経由し宝剣山荘までの稜線歩きで思いのほか苦労を強いられる。視界さえあればまったく難しいところはないのだが、目標物の少ない緩やかな稜線なので、ホワイトアウトすると地図コンパスを見ながらでもたやすく方向を失いかねない。この短い区間で幾度となく迷いかけたり、本来のルートへ戻る為に思いがけず雪壁を登ったりしながら進んだ為、コースタイムの2倍以上かかってようやく宝剣山荘までたどり着く。
すると宝剣山荘の中に学生パーティ(K大山岳部・6名)が避難しているところに出くわし、我々もいったん中へ入り休むことにする。この小屋は本来冬季閉鎖されており、冬用入口はないのだが、前夜に小屋前に幕営していたところあまりの強風により彼らのテントが壊れ、やむなく小屋の壁(窓?)を破って逃げ込んだとの事。この学生パーティは我々と入れ違いに出発したが、我々は時間・体調を考え、本日はこの小屋内でビバークさせてもらうこととした。
これは3名とも疲れが溜まっており、また野木さんの手の凍傷も悪化しているため、一気に降りるより一晩休息が必要と判断したこと、また翌日1/2の方が天候回復するだろうと予想していた事による判断。この後わかったのだが、望月も足の指に凍傷が出来ていた。感覚が鈍くなるためか実際に見て確認するまで気づかなかった・・・(怖っ)
小屋はほぼ雪に埋まっており、中では全く光が無い。風はしのげるものの小屋内でも気温は-12℃とかなりの寒さ。とはいえ毛布等を多少使わせてもらったこともあり、この日はかなり快適に眠れた。小屋内のトイレが使用できたのも有りがたかった。この日の夜は、皆、翌日には下山できるものと思いかなりリラックスしていたのだが…やはり冬山、残念ながら、そうは
問屋が卸さなかった。

[コースタイム]
起床(4:30) 出発(8:50) 木曽駒ヶ岳(9:40, 2956M) 中岳(10:50, 2925M) 宝剣山荘(12:20, 2850M、小屋内-12℃) (21:20)寝る

1/2(水) 烈風・視界ナシ
夜中から風が強まり小屋の中にまでごうごうと聞こえてくる。若干不安もありながら起床、準備をする。いったんは出発すべく小屋の外へ出てみるが、とても人がまともに立っていられないレベルの烈風が吹き続けており、すぐさま小屋内へ退散。その後一度は吉田・望月で空身で外へ偵察へ出るものの、状況まったく変わらず、分岐(乗越浄土)までのたった200mすら、歩行困難な状況で、出てきた小屋を見失いそうなほどで、やはり小屋内へ逃げこむ。
一応12時まで待機するものの風のおさまる気配はなく、本日も沈と決定。燃料、ヘッデンの
電池等も乏しくなり、午後は真っ暗な部屋の中でテントを張りシュラフでずっと昼寝。小屋の毛布、布団も少々拝借。しかし一日中風はやまず、いつ天候回復して下山できるのかとかなり不安にさせられる。(最悪、小屋にいる限り命の不安はないという安心感はあったが)
22時の気象通報にて天気図を取ったところ、同日昼ごろに寒冷前線が通過した模様。さらに
翌日も冬型が強まり各地で大雪、強風は必至とわかったが、午前中に温暖前線が通過し一瞬
疑似好天になるのではないか、そのタイミングを突いて下山しよう、という方針に決まり、
23時頃就寝。

[コースタイム]
起床(6:00) 出発を試みるも断念し、宝剣山荘へ退却(9:30) ルート偵察を試みるが再び断念し宝剣山荘へ退却(10:00) 終日小屋内で沈 (23:00)天気図作成後、寝る

1/3(木) 暴風雪・視界少々
7時には動き出すつもりだったため、朝四時半に起床し準備。明け方いったん風がおさまったが、7時頃は再び強まる。とはいえ前日ほどではない。相変わらず視界はないが、7:30に小屋を出て下山開始。アイゼン+ワカンを両方装備し歩き出す。一度は方向を間違え宝剣岳へのルートへ迷い込んだものの、どうにか千畳敷への下りの分岐である乗越浄土へ到着。ここからはクラストした急斜面で、ワカンは逆に邪魔。吉田さんが一度滑落しかけるがどうにか止まり、結局ここでワカンは外して急斜面を下り始める。
しかし途中からは逆に膝上程度の新雪ラッセル。雪崩を警戒し3人の間隔をあけて下る。
千畳敷のカールに降りたあと、15分程ホワイトアウトの中歩き、8:50にロープウェイ駅へ到着。
ついに下山!今までに経験したことのない苦しい山だった。一面のガスの彼方から千畳敷おnロープウェイ駅を見つけた時はリアルに涙が出た。個人的には、肉体的にも精神的にも今まで経験したことがない厳しい冬山であったが、よい経験でもあったと思う。

ロープウェイ駅で後発隊と連絡を取り、駒ヶ根へ下山後合流。後発隊は12月31日に下山していたと始めて知る。途中まったく連絡が取れておらず、我々先発隊としても動向を心配していたため、先に下山済みとわかり一安心した。また、我々と連絡が取れない中で3日間も待ち続けてくれたことに感謝。最後に取り付きの上松登山口へ車を取りに戻り同日中に帰阪した。

[コースタイム]
起床(4:30) 出発(7:30) 乗越浄土(8:00) 千畳敷(8:50, 2610M)

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