甲斐駒ヶ岳 黄蓮谷右俣

もともと成人の日の三連休は八ヶ岳でアルパインクライミングも考えていたが、冬合宿で年末に甲斐駒ヶ岳に登った時にとにかく雪が少なく、まだ黄蓮谷も登れるのでは? という気がして変更することにした。計画を出したら急遽福岡の深谷さんからも参加表明あり、3人パーティで全装備担いでのアルパインアイス登攀。アルパインとしてもアイスクライミングとしてもこれほど長いルートは初めてで、装備も重たいこともあり、入山前はかなり緊張感があった。

日程: 2016年1月9日~11日
山域: 甲斐駒ヶ岳
ルート: 駒ヶ岳神社~黒戸尾根五合目~黄連谷右俣~甲斐駒ヶ岳山頂~七丈小屋~駒ヶ岳神社
メンバー: 望月、野木、深谷

共同装備
60mダブルロープ×2、ICIゴアライト2-3天、スコップ×1、プローブ×1、鍋×1、火器×2、ガス缶×2、アイススクリュー×9、イボイノシシ×2、ハーケン×2

1月9日
6時起床、最寄りコンビニで朝食、パッキング等を済ませる。
7:40 駒ヶ岳神社出発。延々と黒戸尾根を登る。雪は全くなし。途中黄蓮谷まで見通せるポイントあったがあまりに遠い。
10:00 黒戸尾根1600m鞍部を通過。この辺りから急登となる。
11:30 刃渡り、鎖場を経て刀利天狗を通過。
12:10 5合目小屋跡着。綺麗に凍った篠沢七丈爆が見える。天気は快晴で暖かい。休憩し黄蓮谷への下降点を探す。
13:00 下降開始。スタートのみ赤テープあるがその後は不明瞭となる。左へトラバースしながら降りていくがわかりづらい。
15:15 黄蓮谷本流(五丈の滝の落ち口下)に到着。明るいうちの下降で良かった。早朝暗かったら恐らく相当迷ったと思われる。
15:30 左岸下流側(千丈の滝の上)の樹林帯に積雪少ない平地を見つけ幕営。先行パーティ(北坊主沢へ行く模様)一張り及び焚き火跡あり。その後五丈の滝を偵察するが、上部の氷結が薄くベルグラのため、登攀時は左岸ガレルンゼから高巻きすることにした。夜は快適なビバーク。水は沢から取れた。

1月10日
4時起床、6時出発。未だ暗い中だが七丈小屋からの日帰りアタックのパーティのヘッデンの明かりがすでにかなり見える。すでに五丈の滝に取り付いているパーティもおり先を越されるが、前日の打合せ通り左岸を高巻き突破。その後15mほどの2級の斜滝をノーロープで越え、左俣との分岐に至る。その手前で深谷さんが滝の釜を踏み抜きドボン。一瞬肝を冷やすが幸い膝下だけの水没でスパッツの中は濡れずに済んだ。
7:00 二俣を右に進む。雪、氷が少なく無雪期の沢登りとあまり変わらない。多少ダブルアックスで登るところもあるが、ほぼ歩きで奥千丈の滝に着く。傾斜は緩い氷が延々続き、ほぼロープを出しているうちに後続のほぼ全てのパーティに抜かれる。まあ今回は全装備を担いでいるので傾斜が弱いとはいえ万一の滑落は怖い。他のパーティは皆身軽な日帰り装備で、ノーロープで登っているパーティもいる中では置いていかれても仕方ない。
12:00 奥千丈の滝上(2200m)12時で未だ標高2200m(あと700m以上登らねば終わらない!)という状況だが、ペースは上がらず気持ちばかりが焦る。幸いまだ気温は暖かく、先行パーティのラッセル跡もあるので、それを延々詰めていく。
15:30 奧三段の滝(標高2700m位)
この滝は2段目のみアイスクライミング、後は滝の横の雪壁を歩きで突破。ここまでの間、ロープを出して登ったのはたった2回で、どちらもロープ一本でリードし、中間エイトでフォロー2人を上げる。前半の滝も含め、結果的にはロープは一本あれば十分だったみたいだ。それ以外は皆ほとんど休まずひたすら歩き続ける。甲斐駒本峰の稜線は見えているのにいくら歩いても近づいている気がせず、重いザックが肩に食い込み辛いが、日暮れギリギリにどうにか左の稜線の登山道へ上がり込んだ。
16:50 稜線、17:00 山頂
19:00 七丈小屋幕営指定地
山頂はガスっており展望なく風も強いため、記念写真を撮り早々に下山に入る。ここからの稜線歩きも結構悪く、急斜面、鎖場が連続する。暗い中疲れもあり七丈小屋まで2時間掛かった。朝からの行動時間は合計13時間であった。最後は身体が冷え、手足の指が痛い。テン場は風が吹きさらしでかなり寒い夜となった。酒つまみも多少は残っていたが、あまりに疲れていたため早々に寝る。

1月11日
4:50 起床、7:00 出発
12:00 駒ヶ岳神社到着。
前夜の風が止んで暖かい。下り始めの5合目小屋跡まではところどころ鎖場があるが問題無し。5合目から先はほとんど雪もなくなり、快適なトレイルをのんびり歩き、それでも昼には下山出来た。今回は記録的に雪も少なく、年明け以降にも関わらず雪崩のリスクをほとんど感じず登れたが、こんな年は数十年に一度くらいしかないらしい。とはいえ全部担いでこれだけ長いルートを登攀でき、非常に充実した山行となった。


関西蛍雪山岳会トップページに戻る