夏山合宿 北穂東稜~ドーム中央稜

2015年8月12日~16日
メンバー: 岩田、村上、吉田、岩田(真)、井元、花田

8月12日
アカンダナ駐車場ゲート開き待ち時間を仮眠に充てる。ゲートOPEN後車を止め、準備し、バスに乗り上高地へ。その後涸沢へ。出発前から天気が心配事項であった。朝、昼の段階では晴れていたのでこのまま好天が続けばなぁとのん気に考えていた。
涸沢へ着いたらテント設置。テント1張りとツェルト1張り、それに雨のことを考えてブルーシートをタープ代わりに大きく張る。
夜になり雨が降り出す。予定では翌日は北穂東稜だが雨ではテント待機となる。一応、翌朝の天気を見てから最終決定ということで朝は4時起床予定。

8月13日
夜中の間中、雨、風の音がする。起床予定時刻4時。 雨音はっきりと有り。
誰も起きだしてこない。
よし、僕も寝る。
7時起床。起床予定の4時に誰も起きなかったことをみんなで笑う。だって雨ってわかりきってんだもん。
1日中雨は続く。強くなったり弱くなったりを繰り返す。
涸沢ヒュッテの休憩場所にてみんなコーヒー1杯で4時間過ごす。ゴルゴ13が面白かった。
涸沢の天気予報にて翌日は晴れ時々曇りか霧とのこと。好天を祈りつつ就寝。

8月14日
夜中2時ごろ、雨強し。
朝方、雨かなり強い。
行動不可。今日もテント待機となる。
前日に北穂にビバーク装備で登るだけ登り、14日にドーム中央稜と北壁の2つを狙う案があったが実行しなくてよかったと思った。今朝の雨でツェルトなら精神が死んでた気がする。
昼頃からは天気が安定。天気予報では15日16日は天気が回復するとのことだったので行動予定を北穂東稜→ドーム中央稜の1本に絞ることにした。
今日も涸沢ヒュッテの休憩室にお世話になる。コーヒー1杯で4時間。
僕はカレーも食った。おいしかった。
ゴルゴ13も面白い。

8月15日
晴れた。3時起床。4時半には北穂東稜に向けて出発。
自分としては初のバリエーションルート、本チャンということでかなり緊張していた。自分の技術、体力で果たしてついていけるのかどうか。
5時半、一般ルートから北穂東稜への別れ道。トラバースルート。いよいよだ。ハーネスなどを装備する。
トラバースを終え稜線に向かって登りだす。足場ががれがれの岩場でいつ落石を起こしてもおかしくない状態だった。



1歩1歩の足の置き場、1手1手の持ち手に注意を払わないといけなかったので精神的に非常に疲れた。このときは滑落よりも落石を起こしてしまうかもしれないことのほうに恐怖を感じた。



稜線に出たあとは細い稜線上を北穂高小屋まで登る。鎖もロープもなく、細い岩の先を、ミスをしたら落ちて死ぬような道を、1時間近く登り続ける。



よほど危ない場所にはハーケンや残地スリングがあるがどれも慰め程度。このときは滑落による死の恐怖を常に感じていた。



バリエーションルートって恐ろしい。それが初のバリエーション、北穂東稜で抱いた感想だった。北穂高小屋に着いたときはホッとしてもう帰ろうかと思ったくらいだった。

ホッとしたのもつかの間、少し休憩しギア類を整理したあとはドーム中央稜に向けて出発。 北穂から涸沢に向け縦走路を行きクサリ場を降りきった場所から縦走路から分かれる。ここでも思ったのは整備されていない山道というのはこんなにも危ないものなのかということだった。縦走路しか歩いたことがなかった自分にとってはドーム中央稜の取り付きにいたる道ですら怖かった。



少し道に迷いながらも比較的スムーズに懸垂点へとたどり着き懸垂下降。その後ゆるい登りのふみ跡を登ると有名なドーム中央稜の取り付きへと出た。
パーティー分けは村上さん、井本さん、和さんと僕と岩田さん達。
僕らのパーティー1P目は真利子さんリード。
すいすいと登っていく。マジか。



しかし、上部のほうでなにやらてこずっている様子。ザックをデポし、空身になり抜ける。
フォロー1人目、僕が登る。下部のほうは手も足もしっかりあり楽に登れるが上部のほうのチョックストーンあたりから難しくなる。チムニーが広くなり、どうしてもチムニーの中に中に入ってしまうが、そうするとチョックストーンの乗り越えが非常に難しくなってしまう。ステミングでチムニーの手前でがんばりつつチョックストーンを越える。いや、これ難しい。
フォロー2人目、岩田さん。サクッと登りザックも回収。さすがです。

2P目、ほぼコンティニュアス。

3P目、岩田さんリード。
フォロー時も特に問題なく登れた。

4P目、岩田さんリード。
ここで僕は目が吹っ飛ぶかと思う光景を見た。自分のパーティーではない。下から登ってきていた別のパーティがいたのだが、そのビレイヤーが信じられないことをしていたのだ。
その人はピナクルに支点を取りルベルソでフォロー確保していたのだが、なんと支点との接続のカラビナをルベルソの落下防止ワイヤーに掛けていたのである。あのワイヤーには100KN程度の強度しかないと書いてあった。もしクライマーが落ちればワイヤーは耐え切れず崩壊する。
とはいっても、もうクライマーは登っているし自分は岩田さんを確保しているしで、どうすることもできず、目の前で人が死ぬんじゃないかと自分が登っているとき以上に怖かった。
無事にそのパーティーのクライマーが登ってきたときに思わず声を掛けたが、クライマーの人も信じられないといった顔で相棒を見ていた。そりゃそうだ。おぉ怖い怖い。事故を起こさないようにしないと。

5P目、岩田さんリード。
気を取り直してしっかり登る。ドーム中央稜で一番難しかったのは1P目だと思う。5P目もそこそこ難しかったが足も手もしっかりあるので比較的スムーズに登れた。
途中、真新しい#0.5番のカムがクラックの置く深くに残置されていて、ちょっと欲張って回収してみようとチャレンジしたがだめだった。 くそっ、おしいな。
あとで聞いたらやっぱりみんなチャレンジしてたみたいだった。考えることは一緒だな。
1時半ごろ、ドームの頭に到着。全員登頂。帰りに北穂とドーム北壁をチラ見しつつ涸沢BCへ帰着。いや~怖かった。

8月16日
朝、涸沢出発。上高地をへてアカンダナ駐車場。お風呂に入り、ご飯を食べて帰阪。
以上お疲れ様でした。
感想
自身にとって初のバリエーション、本チャン体験であった夏合宿。バリエーションに行けたことやドーム中央を登れたことより怪我なく帰ってこれたことが一番よかった。この山行では常に恐怖のほうがほかのどんな感情より勝っていたと思う。
あとは天気に恵まれはしなかったが、逆にもしすべてが好天だったとしたら体力が持ったかもわからなかった。実際、十分に休めていたはずの今回の北穂→ドームの1日の山行ですらかなりの疲労感を伴った。これがもし3日間すべてが同程度の山行予定だとしたら・・初心者の自分にはかなりきつかったんじゃないかと思う。ある意味、雨で不幸中の幸いだったかも知れない。
全体的に恐怖が勝った山行だったが、北穂高小屋に着いた時、登ってきた東稜を見たあの感動は言葉では語れない。またいつか、行きたいと思う。


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